さて、そんなわけで後半部分です。気づけば全部合わせて5000文字超えてたりして自分は何をそんなに書いたのかと思いました(しみじみ)
無意味に雰囲気を変えてバトルシーンだったり何だったりするわけですが、あんまり臨場感とかスピード感とかそう言うものが出せませんでした(がくり)
くおぉ……文才が欲しいー…orz
二刀流と弓使いの組み合わせって昔の自分のピンポイント萌えなんで、凄く頑張りたかったんですが…空回りしてますな(ほろりら)
何度か見直したんですが、やっぱり微妙に納得が行ってないのできっと随時修正すると思われます。
有難いことにこの後の花火風景やら何やらを銀狗さんに描いて頂けるそうで…有難さに涙が(ほろほろほろ・泣くな)
そんなわけで、なるべく銀狗さんが格好良くなるように頑張ってみました…心意気だけは!(実を伴え)
無意味に雰囲気を変えてバトルシーンだったり何だったりするわけですが、あんまり臨場感とかスピード感とかそう言うものが出せませんでした(がくり)
くおぉ……文才が欲しいー…orz
二刀流と弓使いの組み合わせって昔の自分のピンポイント萌えなんで、凄く頑張りたかったんですが…空回りしてますな(ほろりら)
何度か見直したんですが、やっぱり微妙に納得が行ってないのできっと随時修正すると思われます。
有難いことにこの後の花火風景やら何やらを銀狗さんに描いて頂けるそうで…有難さに涙が(ほろほろほろ・泣くな)
そんなわけで、なるべく銀狗さんが格好良くなるように頑張ってみました…心意気だけは!(実を伴え)
◆◇◆
「あーあーテステス、こちらディンくんです、どーぞ?」
「……それは、何かの口上か?」
「うんお約束。基本なんで一応な!」
「そうか」
浜辺を貸切といっても、勿論範囲は限られている。今二人が立っている丘の上は、その境界線だった。
一分も歩けばそこは既に外。
貸切になっている浜辺は端の岩場以外は見晴らしが良く、月明かりに負けぬ明るい花火が咲く空を見上げる人々の数も多い。その目を掻い潜って現れることが出来る敵も早々いないだろう。
もし何か、襲撃があるとするならば――それは、境界から、という可能性が高い。
「んー、俺はあっちのGの方をぐるーって回ってくるから、銀狗は向こうの方を回ってきてくれるかー?」
「というと、エリアFか。了解した」
「何かあったら呼ぶから、声は聞こえる範囲でヨロ! ……難聴とか患ってないよな?」
「幸い、耳はいい方でな。――では、また後で」
「おう、終わったら遊ぼうなー♪」
軽い調子で一時相手と別れ、ディンは軽く伸びをする。先程まで身につけていた浴衣を脱ぎ、その姿はいつもと同じ、動きやすさに重点が置かれた装備に変わっていた。
故郷から持ち出した弓を片手に携え、改めて背に負った矢を確認する。
冒険前のいつもの仕草は、浮かれていた気分を引き締める効果があったようだ。
「……っし! そんじゃま、お仕事しますか!」
夜とはいえ、花火の輝きは少し離れた丘も惜しみなく照らしてくれる。月明かりも手伝って、視界に関してはさして不安など無かった。
丘の上からまばらに見えるのは、夜の喧騒を楽しむ人々と――眼下の岩場にいるのは、何か良からぬことを企む男性陣だろうか。
「……一本くらい射っといてもいいかな?」
言いながらも背に手を伸ばすことはない。実行に移すまでは放置しておいていいだろう。
「矢は普通に限りあるしな。勿体無いよな。うん」
一人ごちながら、そのまま哨戒を続ける。
その間もさして問題は無く(覗き騒動があったがそれも祭りの一環。警備隊の手を煩わせるまでも無く当人たちがしっかりオトシマエをつけていた)、そろそろ終わり、というところで視線を巡らせると、小さな黒い背中が闇に溶け込んでいた。
「あー……でも、見失う心配なさそうだ」
闇に溶け込んだ姿、だがここにいると声高に存在を主張するのは、闇の中、浮かび上がるような銀の髪。
さらさらと風の動きに従い流れる髪は静かな月明かりを反射し、月と同じ色で輝いている。
「うん、やっぱり月には銀が似合うよな。格好いい」
うんうん、と一人で頷き、ディンは遠くに見える月白色(ユエパイスー)へと駆け寄っていった。
「エリアF異常なし……」
「おーい、そろそろ交代の時間だから上がって花火でもしねー?」
「ああ、もう交代の時間か」
生真面目な表情で見張りの任をこなしていた銀狗は、背後から掛けられた声に振り向いて表情を緩める。
「花火とは……それもまた情緒があって良いな」
「うん、主にヘビ花火とかネズミ花火とか線香花火とかロケット花火的な情緒もいいよな!」
情緒とはかけ離れた発言をしながら、さて引き上げるか……と踵を返しかけたところで、ふと、ディンの動きが止まる。
「どうした? 帰るのでは……」
「や、今何か、向こうの方で見えたような……気が」
「……どこだ?」
銀狗は身を翻し、ディンが指し示す方向を睨み付けるようにして探す。
「丘の下、浜辺とは反対方向の、あの森の影……あんなところで光るものなんてないよな?」
森は丘の陰に隠れて周囲よりも一際暗く、花火の照り返しにしてはタイミングもおかしい、と眉根を寄せるディンに、銀狗は頷いた。
「確かに、何かいるようだ」
「え、見えるんだ?」
「これくらいなら、な。
……確かめてくる」
言うが早いか、銀狗はひらりと身を翻し、服の裾をはためかせて森へと向かう。
「ちょっ、俺も行くっ!」
姿勢を低くして静かに先行する相手を慌てて追いかけるように、ディンも負けじと地面を蹴った。
足元が暗いというのに、銀狗は迷い無く丘を駆け下りていく。ディンは僅かに緊張を帯びながらもスピードを落とさず、銀狗の足跡を正確に辿って足場を確保しながら後に続いた。
「……確か、ここだったか」
「ちょっとばかりの、コンパスの差が、辛いね……!
っと、……あれ?」
一呼吸遅れて降りてきたディンは、その場所に立った途端、訝しげに顔を歪める。
銀狗が何かを探ろうと一歩を踏み出す――前に、森の中から低い唸り声が聞こえてきた。
「やはり……何かいる、らしいな」
「ぅあ、ヤベ」
野の獣が臨戦態勢を取るような迅速さで二刀を握った銀狗とは裏腹、ディンは歪めた表情をさらに崩し、苦虫を噛み潰したような表情で背後の矢へと手を伸ばす。
「『別口』かよ……クソ、面倒な」
音ではなく、唇だけで呟かれた悪態は、銀狗の耳には届かなかった。
◆◇◆
「……見ない敵だな」
森の奥から出てきたソレは、薄闇の中その輪郭をあらわにした。
人のような四肢と、獣のような体毛。明らかな異形は、この島で見るモンスターではない。
それを訝しみながらも、銀狗の口調は淡々としてそれほど気にした様子は無い。
「カ、ァ――ゲェ」
獣に似た声帯が、まるで赤子の言葉のような鳴き声を響かせる。
一挙手一投足を見逃すまい、と構えた銀狗の耳に、風を切る音が響いた。
ヒュン――
すぐ脇を走り抜けた鏃が、狙い違わずモンスターの喉に突き刺さる。
「ガ、グァ、アァーー!?」
「先手必勝――ってな」
銀狗の背後から聞こえるのは、不敵――というよりも、むしろふてぶてしい声。
唇の端を上げ、既に二矢(にし)を番えたディンは、銀狗に向かって声を上げる。
「足、頼んだ!」
「承知」
与えられた役目に短く応え、銀狗は音も無く地面を蹴った。
――横薙ぎ。
――袈裟懸け。
――逆手返し。
素早い動きから矢継ぎ早に繰り出される二刀。
休みの無い攻撃は、相手から自由に動く余裕を奪う。
一呼吸の間に敵へと降り注ぐ攻撃の軌跡はふたつ。それら全てを避け切ることなど不可能に近い。
掛け声など不要。しなやかに無駄の無い攻撃を淡々と繰り出しながら、銀狗は敵の足へと攻撃を集中させる。
動きの鈍った敵に降り注ぐのは、非情な一矢。それは、ただの一矢も外れることなく。
――左腕を貫き。
――右肩を射抜き。
――脇腹を抉り。
膝を付き、確(しか)と構えた弓から繰り出される矢は、銀狗の脇を縫うように敵の上半身に次々と突き刺さっていった。
一矢一矢にはそれほどの威力はなくとも、その攻撃は確実に相手の力を削いでいく。
そして、その矢よりも鋭いのは、視線。
風色の瞳が夜の闇を映し、冴え冴えとした輝きをもって敵を射抜く。その射線は、一時たりとも外れることは、無く。
「グォギグァ――!!」
既に満足に吼えることすら出来ない怪物が、吼えた。
視線の矢に耐えかねたとでも言うように、思い通りに動かぬ両足から汚泥のような血が流れるのも構わず、ディンに向かって跳躍し――。
「……させん」
――斬。
峰を返した右手の一刀が、跳躍を阻むように上段から振り下ろされる。
同時、低く構えた左手の一刀が、地面を蹴った怪物の右足首を斬り捨てた。
「■■■■■■――!!」
声にならぬ響きが、周囲の空気をびりびりと震わせる。
だが、ディンを背に庇うように構えた銀狗は僅かの怯えも無く、静かな瞳で敵を見据えた。
「罷り通ると言うのならば――越えてもらおうか」
静かな気迫に押されたか、敵の動きが縫い付けられたかのように、止まり。
――同時。
その眉間を、容赦の無い風の鏃が射抜いた。
◆◇◆
「……っはー、お疲れさん!」
それから暫くは緊張が続いたが、どうやら事切れたらしい、と判断したディンは一気に緊張を解き、肩を鳴らしながら立ち上がる。
それに合わせて銀狗も刀を引き、鞘に収めて相手を振り返った。
「ああ。……大したことがなくて良かったな」
「や、それは銀狗が強かったからだって! 特に最後のとか格好良くてアレだね、惚れるね。
ま、ともかくサンキュなっ。流石の俺もあそこで飛び掛られたらヤバかったし」
「いや。俺は前衛、ディンは後衛。
役割分担、なのだろう?」
「ん、そーゆーコトだな!」
出会った直後のやり取りを思い出したかそう言った銀狗に、ディンは満足げに頷く。
ふと傍を一瞥したディンの視線を追い、倒れているモンスターを見下ろした銀狗は、暫しの沈黙の後、口を開いた。
「……しかし、何だったのだろうな、これは」
「んー……、ま、片付いたんだし何でもいーんじゃね? あ、祭り好きのモンスターだったとか!
お祭りしてるって言うから、血が騒いで見に来たモンスター……でどうだ!」
呟かれた純粋な疑問に、ディンは陽気に笑いながら冗談を口にする。
「ふ……それならば、これも災難だったな」
ようやく戦闘の余韻も抜けたのか、釣られたように表情を緩めた銀狗に頷き、ディンは身を翻して銀狗の眼前に立つ。
「それじゃ、使命も果たしたことだしさっさと帰ろうぜっ。
んで改めて花火だ花火!」
「ああ。少し遅くなってしまったが、そうしようか」
両手を背中で組み、待ちきれないというようにその場で駆け足をするディンに頷き、銀狗も歩き出す。
――誰も知らぬ戦いは終わり、向かう先は皆が騒ぐ祭り。
浜辺の夏休みは、まだ、終わらない。
「あーあーテステス、こちらディンくんです、どーぞ?」
「……それは、何かの口上か?」
「うんお約束。基本なんで一応な!」
「そうか」
浜辺を貸切といっても、勿論範囲は限られている。今二人が立っている丘の上は、その境界線だった。
一分も歩けばそこは既に外。
貸切になっている浜辺は端の岩場以外は見晴らしが良く、月明かりに負けぬ明るい花火が咲く空を見上げる人々の数も多い。その目を掻い潜って現れることが出来る敵も早々いないだろう。
もし何か、襲撃があるとするならば――それは、境界から、という可能性が高い。
「んー、俺はあっちのGの方をぐるーって回ってくるから、銀狗は向こうの方を回ってきてくれるかー?」
「というと、エリアFか。了解した」
「何かあったら呼ぶから、声は聞こえる範囲でヨロ! ……難聴とか患ってないよな?」
「幸い、耳はいい方でな。――では、また後で」
「おう、終わったら遊ぼうなー♪」
軽い調子で一時相手と別れ、ディンは軽く伸びをする。先程まで身につけていた浴衣を脱ぎ、その姿はいつもと同じ、動きやすさに重点が置かれた装備に変わっていた。
故郷から持ち出した弓を片手に携え、改めて背に負った矢を確認する。
冒険前のいつもの仕草は、浮かれていた気分を引き締める効果があったようだ。
「……っし! そんじゃま、お仕事しますか!」
夜とはいえ、花火の輝きは少し離れた丘も惜しみなく照らしてくれる。月明かりも手伝って、視界に関してはさして不安など無かった。
丘の上からまばらに見えるのは、夜の喧騒を楽しむ人々と――眼下の岩場にいるのは、何か良からぬことを企む男性陣だろうか。
「……一本くらい射っといてもいいかな?」
言いながらも背に手を伸ばすことはない。実行に移すまでは放置しておいていいだろう。
「矢は普通に限りあるしな。勿体無いよな。うん」
一人ごちながら、そのまま哨戒を続ける。
その間もさして問題は無く(覗き騒動があったがそれも祭りの一環。警備隊の手を煩わせるまでも無く当人たちがしっかりオトシマエをつけていた)、そろそろ終わり、というところで視線を巡らせると、小さな黒い背中が闇に溶け込んでいた。
「あー……でも、見失う心配なさそうだ」
闇に溶け込んだ姿、だがここにいると声高に存在を主張するのは、闇の中、浮かび上がるような銀の髪。
さらさらと風の動きに従い流れる髪は静かな月明かりを反射し、月と同じ色で輝いている。
「うん、やっぱり月には銀が似合うよな。格好いい」
うんうん、と一人で頷き、ディンは遠くに見える月白色(ユエパイスー)へと駆け寄っていった。
「エリアF異常なし……」
「おーい、そろそろ交代の時間だから上がって花火でもしねー?」
「ああ、もう交代の時間か」
生真面目な表情で見張りの任をこなしていた銀狗は、背後から掛けられた声に振り向いて表情を緩める。
「花火とは……それもまた情緒があって良いな」
「うん、主にヘビ花火とかネズミ花火とか線香花火とかロケット花火的な情緒もいいよな!」
情緒とはかけ離れた発言をしながら、さて引き上げるか……と踵を返しかけたところで、ふと、ディンの動きが止まる。
「どうした? 帰るのでは……」
「や、今何か、向こうの方で見えたような……気が」
「……どこだ?」
銀狗は身を翻し、ディンが指し示す方向を睨み付けるようにして探す。
「丘の下、浜辺とは反対方向の、あの森の影……あんなところで光るものなんてないよな?」
森は丘の陰に隠れて周囲よりも一際暗く、花火の照り返しにしてはタイミングもおかしい、と眉根を寄せるディンに、銀狗は頷いた。
「確かに、何かいるようだ」
「え、見えるんだ?」
「これくらいなら、な。
……確かめてくる」
言うが早いか、銀狗はひらりと身を翻し、服の裾をはためかせて森へと向かう。
「ちょっ、俺も行くっ!」
姿勢を低くして静かに先行する相手を慌てて追いかけるように、ディンも負けじと地面を蹴った。
足元が暗いというのに、銀狗は迷い無く丘を駆け下りていく。ディンは僅かに緊張を帯びながらもスピードを落とさず、銀狗の足跡を正確に辿って足場を確保しながら後に続いた。
「……確か、ここだったか」
「ちょっとばかりの、コンパスの差が、辛いね……!
っと、……あれ?」
一呼吸遅れて降りてきたディンは、その場所に立った途端、訝しげに顔を歪める。
銀狗が何かを探ろうと一歩を踏み出す――前に、森の中から低い唸り声が聞こえてきた。
「やはり……何かいる、らしいな」
「ぅあ、ヤベ」
野の獣が臨戦態勢を取るような迅速さで二刀を握った銀狗とは裏腹、ディンは歪めた表情をさらに崩し、苦虫を噛み潰したような表情で背後の矢へと手を伸ばす。
「『別口』かよ……クソ、面倒な」
音ではなく、唇だけで呟かれた悪態は、銀狗の耳には届かなかった。
◆◇◆
「……見ない敵だな」
森の奥から出てきたソレは、薄闇の中その輪郭をあらわにした。
人のような四肢と、獣のような体毛。明らかな異形は、この島で見るモンスターではない。
それを訝しみながらも、銀狗の口調は淡々としてそれほど気にした様子は無い。
「カ、ァ――ゲェ」
獣に似た声帯が、まるで赤子の言葉のような鳴き声を響かせる。
一挙手一投足を見逃すまい、と構えた銀狗の耳に、風を切る音が響いた。
ヒュン――
すぐ脇を走り抜けた鏃が、狙い違わずモンスターの喉に突き刺さる。
「ガ、グァ、アァーー!?」
「先手必勝――ってな」
銀狗の背後から聞こえるのは、不敵――というよりも、むしろふてぶてしい声。
唇の端を上げ、既に二矢(にし)を番えたディンは、銀狗に向かって声を上げる。
「足、頼んだ!」
「承知」
与えられた役目に短く応え、銀狗は音も無く地面を蹴った。
――横薙ぎ。
――袈裟懸け。
――逆手返し。
素早い動きから矢継ぎ早に繰り出される二刀。
休みの無い攻撃は、相手から自由に動く余裕を奪う。
一呼吸の間に敵へと降り注ぐ攻撃の軌跡はふたつ。それら全てを避け切ることなど不可能に近い。
掛け声など不要。しなやかに無駄の無い攻撃を淡々と繰り出しながら、銀狗は敵の足へと攻撃を集中させる。
動きの鈍った敵に降り注ぐのは、非情な一矢。それは、ただの一矢も外れることなく。
――左腕を貫き。
――右肩を射抜き。
――脇腹を抉り。
膝を付き、確(しか)と構えた弓から繰り出される矢は、銀狗の脇を縫うように敵の上半身に次々と突き刺さっていった。
一矢一矢にはそれほどの威力はなくとも、その攻撃は確実に相手の力を削いでいく。
そして、その矢よりも鋭いのは、視線。
風色の瞳が夜の闇を映し、冴え冴えとした輝きをもって敵を射抜く。その射線は、一時たりとも外れることは、無く。
「グォギグァ――!!」
既に満足に吼えることすら出来ない怪物が、吼えた。
視線の矢に耐えかねたとでも言うように、思い通りに動かぬ両足から汚泥のような血が流れるのも構わず、ディンに向かって跳躍し――。
「……させん」
――斬。
峰を返した右手の一刀が、跳躍を阻むように上段から振り下ろされる。
同時、低く構えた左手の一刀が、地面を蹴った怪物の右足首を斬り捨てた。
「■■■■■■――!!」
声にならぬ響きが、周囲の空気をびりびりと震わせる。
だが、ディンを背に庇うように構えた銀狗は僅かの怯えも無く、静かな瞳で敵を見据えた。
「罷り通ると言うのならば――越えてもらおうか」
静かな気迫に押されたか、敵の動きが縫い付けられたかのように、止まり。
――同時。
その眉間を、容赦の無い風の鏃が射抜いた。
◆◇◆
「……っはー、お疲れさん!」
それから暫くは緊張が続いたが、どうやら事切れたらしい、と判断したディンは一気に緊張を解き、肩を鳴らしながら立ち上がる。
それに合わせて銀狗も刀を引き、鞘に収めて相手を振り返った。
「ああ。……大したことがなくて良かったな」
「や、それは銀狗が強かったからだって! 特に最後のとか格好良くてアレだね、惚れるね。
ま、ともかくサンキュなっ。流石の俺もあそこで飛び掛られたらヤバかったし」
「いや。俺は前衛、ディンは後衛。
役割分担、なのだろう?」
「ん、そーゆーコトだな!」
出会った直後のやり取りを思い出したかそう言った銀狗に、ディンは満足げに頷く。
ふと傍を一瞥したディンの視線を追い、倒れているモンスターを見下ろした銀狗は、暫しの沈黙の後、口を開いた。
「……しかし、何だったのだろうな、これは」
「んー……、ま、片付いたんだし何でもいーんじゃね? あ、祭り好きのモンスターだったとか!
お祭りしてるって言うから、血が騒いで見に来たモンスター……でどうだ!」
呟かれた純粋な疑問に、ディンは陽気に笑いながら冗談を口にする。
「ふ……それならば、これも災難だったな」
ようやく戦闘の余韻も抜けたのか、釣られたように表情を緩めた銀狗に頷き、ディンは身を翻して銀狗の眼前に立つ。
「それじゃ、使命も果たしたことだしさっさと帰ろうぜっ。
んで改めて花火だ花火!」
「ああ。少し遅くなってしまったが、そうしようか」
両手を背中で組み、待ちきれないというようにその場で駆け足をするディンに頷き、銀狗も歩き出す。
――誰も知らぬ戦いは終わり、向かう先は皆が騒ぐ祭り。
浜辺の夏休みは、まだ、終わらない。
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